建設業の技術継承に!ベテラン社員の勘・コツ・感覚的判断も探せる「生成AI-RAG」とは?

「この工法のことなら○○さんに聞けば分かる」
「過去の類似案件は△△部長しか知らない」
「必要な技術資料を探すのに膨大な時間がかかる」
長年培われた経験やノウハウのうち、特定の社員の知識や経験に依存している部分は「暗黙知」と呼ばれます。こうした暗黙知の蓄積は、高齢化や人手不足が進む建設業において、組織的な技術継承を難しくする要因の一つとなっています。
そこで注目されているのが、生成AIとRAG(ラグ:検索拡張生成)を組み合わせた活用手法です。
本記事では、建設業で技術継承が課題となる理由から、生成AI-RAGがどのように技術継承を支援するのかまで詳しく解説します。
建設業で技術継承が課題となっている理由

建設業では長年にわたり、技術継承が課題となってきました。 その理由の一つが、現場で培われた経験や判断ノウハウが特定の担当者に蓄積され、属人化しやすいことです。個人の経験に依存した知識は、退職や異動によって失われるリスクがあります。
一方で、資料や記録を残していれば解決するというわけでもありません。 施工要領書や報告書、過去案件資料などが存在していても、社内サーバーや共有フォルダ、個人PC、紙資料などに分散していると、必要な時に見つけ出すことが難しくなります。
結果として、 「過去案件の経緯は〇〇さんに聞いた方が早い」 「手順書の保存先が見つからないから〇〇さんに聞こう」 というように特定のベテラン社員への問い合わせが集中します。 資料や記録を残していても、必要な時に必要な人が引き出せるようになっていなければ、活用されることはありません。
近年ではデジタル化によって保存できるデータ量が増えた一方で、それらを整理・活用する負担も大きくなっています。建設業において技術継承の難しさは、データ化・蓄積の問題だけではなく、蓄積された情報を活用できる環境づくりにあるともいえるでしょう。
属人化が招く3つのリスク

属人化が進むと組織全体の生産性や技術継承に影響を及ぼす可能性があります。ここでは代表的な3つのリスクについて解説します。
1.ベテラン社員への負荷が増える

過去案件の経緯確認や類似事例の問い合わせ、資料の所在確認など、同じような質問が特定の担当者へ集中しやすくなります。 その結果、本来取り組むべき技術検討や顧客対応に十分な時間を確保できなくなり、組織全体の生産性低下につながります。
2.新人社員の成長が遅れる
必要な情報を自力で探せる環境が整っていないと、
- 誰に聞けばよいか分からない
- 質問したいが忙しそうで聞きづらい
- 膨大な資料の中から必要な情報を探し出せない
といった状況が発生します。 その結果、新入社員の早期戦力化が難しくなります。
3.退職と同時に知識も失われる
企業にとって最も大きなリスクです。
過去案件で発生したトラブルへの対応経緯や、発注者との協議内容、現場ごとの運用ノウハウなどが個人の記憶に依存している場合、退職や異動によって重要な知識まで失われてしまいます。
同じ問題が発生した際に過去の知見を活用できず、調査や検討を一からやり直さなければならないケースも少なくありません。
これらは個人の問題というよりも、組織として向き合うべき課題といえるでしょう。知識やノウハウを特定の担当者に依存させるのではなく、必要な情報へ誰もがアクセスできる環境を整備し、組織全体で活用しやすい仕組みづくりが重要になります。
生成AI-RAGとは?

一般的な生成AIは、事前に構築された大規模言語モデルをもとに回答します。そのため、自社の業務ルールや過去案件資料、社内ノウハウといった企業固有の情報は参照できません。 そこで活用されるのがRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)です。 RAGは、
- 関連資料を検索
- 必要な情報を取得
- 取得した内容を基に回答生成
という流れで動作します。
あらかじめ社内資料や技術文書をナレッジベース(社内の知識やノウハウを集約・蓄積するための仕組み)に登録しておくことで、それらの情報を参照した回答が可能になります。
その結果、過去案件資料や技術資料、社内ノウハウといった企業独自の知識を活用しながら、より実態に即した回答を得られるようになります。
また、一般的な生成AIの課題である、実際には存在しない情報や根拠の不明確な内容をあたかも正しい情報のように回答してしまう「ハルシネーション(誤回答)」の抑制も期待できます。
生成AI-RAGを活用するとどう変わるか

生成AIとRAGを活用することで、日々蓄積された資料を横断的に検索し、必要な情報へ素早くアクセスできる環境を構築できます。
ここでは、生成AI-RAGによって業務がどのように変わるのかを2つの例をもとに紹介します。
1. 過去の知見を活用しやすくなる

実際に、RAGの有無で情報収集の流れは次のように変わります。
Before
過去案件の実績を調べたい
↓
共有フォルダを開く
↓
フォルダ名やファイル名で検索
↓
大量の候補ファイルを確認
↓
欲しい情報が見つからない
↓
ベテラン社員へ問い合わせ
↓
30分〜2時間経過
After
過去案件の実績を調べたい
↓
「○○工法の社内での過去実績を教えて」
と入力
↓
AIが過去案件資料を横断検索
↓
関連する情報を抽出・整理・要約
↓
参照元資料のリンクとあわせて回答
↓
数分で情報取得完了
RAGはベテラン社員が持つ経験や判断ノウハウをすべて再現するものではありません。しかし、既に社内に存在している資料や記録、過去案件の知見を横断的に活用し、必要な情報へ素早くアクセスできる環境を構築することは可能です。
2. 新人社員の育成も変わる

従来、新人社員が業務で分からないことに直面した場合、
- 教育担当の先輩や上司へ質問する
- 社内規定や業務資料を自力で探す
といった方法で情報を収集することが一般的でした。
生成AI-RAGであれば、
- 社内規定
- 業務手順
- 技術資料
- 過去事例からの教訓
など社内で登録されている全てのデータベースから、知りたい内容だけを対話形式で分かりやすく回答してくれます。
新人社員の中には、先輩社員が忙しそうで質問をためらってしまうケースもあります。また、質問したい内容は一つだけなのに、確認に時間がかかってしまうことも少なくありません。
生成AI-RAGであれば、質問する相手の都合を気にせず、必要な時に知りたい内容だけを何度でも確認できるため、自分のペースで学習を進めることが可能です。 そのため、新人社員の自律的な学習を支援するとともに、教育側の負荷軽減も期待できます。
導入前に知っておきたい3つのポイント

1. RAGは魔法ではない
RAGは魔法ではありません。 登録された資料をもとに回答を生成する仕組みであるため、文書やファイルとして存在しない情報や、誰も記録していないノウハウまでを自動的に回答できるわけではありません。 しかし、これは欠点ではありません。参照できる情報がない場合に無理に回答を作り出さず、根拠のない情報を回答しにくいこともRAGの特徴の一つです。
2. 完璧な資料整備を目指す必要はない
データベースに登録する資料が充実しているほど、回答精度の向上が期待できます。 一方で、ゼロから大規模な資料整備を行う必要はありません。 運用を続けながら資料やナレッジを追加していくことで、社内の知識基盤を継続的に育てていくことができます。蓄積された知識は組織の資産として残り続けるため、長期的な技術継承にもつながります。
3.セキュリティの確認は不可欠

生成AIの活用に興味がある一方、 情報漏洩が不安という理由で導入を見送っている企業も少なくありません。 そのため、社内資料が外部学習に利用されないか、データが安全に管理されるか、自社専用環境として利用できるか、といった点を事前に確認することが重要です。
自社専用対話型AI 「GENBA-Navi AI」とは?
GENBA-Navi AIは、社会・産業インフラ業界向けの生成AIナレッジ活用ソリューションです。社内規程、技術基準、マニュアル、過去案件資料などの膨大な文書をAIが横断的に検索・参照し、利用者の質問に対して迅速かつ分かりやすく回答します。
従来、社内文書に埋もれていた知識やノウハウを有効活用し、必要な情報へ素早くアクセスできる環境を実現します。GENBA-Navi AIの主な活用メリットは以下の4点です。
1. 属人化の解消
PDF、Excel、PowerPointなどの社内資料をナレッジベースとして活用できるため、個人のPCに保存されたままのファイルや、特定の担当者しか把握していなかった情報も組織全体で活用しやすくなります。
2. 生産性の向上
社内資料や過去案件資料を横断的に検索し、数秒から数十秒で回答を得ることができます。資料を探す時間や担当者へ問い合わせる時間を削減できるほか、参照元資料へのリンクもあり、回答内容の根拠を得る時間の短縮も可能です。
3. 人材育成の促進
社内規程や業務手順、技術資料などを対話形式で分かりやすく確認できるため、新人社員の自律的な学習を支援します。質問相手の都合を気にすることなく学べるため、教育負荷の軽減や早期戦力化にもつながります。
4. セキュアな環境で運用可能
登録した社内資料やナレッジデータは外部(社外)と共有されないセキュアな仕組みを採用しており、自社専用の安全な環境で運用できます。自社の重要な機密情報を扱う場合でも、安心して利用できる環境を提供します。
技術継承の鍵は、知識を活用できる環境づくり
過去案件資料や技術資料、社内ノウハウは企業にとって重要な情報資産です。しかし、それらが十分に活用される環境でなければ、せっかく蓄積された知識やノウハウも埋もれていってしまいます。
技術継承、属人化解消、新人育成といった課題に対し、生成AI-RAGは社内ナレッジ活用を支える有効な選択肢の一つとなるでしょう。ベテラン社員が退職してから慌てるのではなく、今ある知識やノウハウを組織全体で活用できる仕組みづくりが、これからの建設業には求められています。